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2013年6月15日土曜日

ミンダナオ島、平和教育事例紹介:Peace Village Residential Experience(平和村居住体験)(1)


2011年10月27日(木)~30日(日)、Peace Village Residential Experiences(平和村居住体験、以下平和村あるいは平和村キャンプ)の調査を行うためにフィリピン、フィリピンミンダナオ島北ラナオ州のカパタガンに行ってきました。平和村とは、フィリピンの第10リージョンの教育省が主導して行なっている年に一度の小学生のための平和イベント、一連の平和教育の教育パッケージでありまた、平和村のイベントが行われる場所をさしますが、平和村居住体験は泊りがけの平和イベントの名称です。イベントではワークショップあり、コンサートあり、出し物、花火等々何でもあり、小学生高学年の子どもたちはイベントを楽しみつつ、他宗教・文化に属する新しい友だちをつくり、平和について多くを学んだ期間となったようです。私自身は幼少期から他宗教への寛容を促す活動の重要性を今回の平和村の活動を通じて、一つの例として見ることができました。






 北ラナオ州は、フィリピンの首都マニラがあるルソン島に次いで2番目に大きな島、ミンダナオ島
の北部に位置し、幾度も政府軍とMILFの衝突の舞台になってきた土地です。滞在期間中、調査等々に同行してくれた地元の小学校校長はMILFの人質となった経験をしたと話してくれました。人口は約54万人、言語はセブアノ語とマラナオ語が話されており、クリスチャンが75%、ムスリム約20%、その他5%が先住民族とされています。ムスリム自治区(ARMM)外での平均的な人口構成比だと思います。州知事はフィリピンで当時最年少であるマホメド・ディマポロ氏が州知事です。フィリピン国内ではバギオの寄宿学校、そしてアメリカで学んだエリートで、イスラム教徒です。
 紛争と望まぬままにも同居してきたような歴史を持つ土地であるが故か、平和への強い思いを教員、イベント関係者から感じます。しかし、過去の歴史からミンダナオ島外から移住した主にキリスト教徒と人々と長くこの地に住む先住民族とムスリムの人たちにはお互いへの不信感があります。ムスリムの人たちは学校に子どもを通わせるとキリスト教化すると恐れ、一方のクリスチャンはムスリムが暴力的であると認識し、更には彼らの文化的、宗教的様式を知らないために見下したり、必要以上に避けていたといいます。

 平和村では、子どもたちが、交流を楽しみながらも平和について考え、学び、異なる宗教・文化を持つ人たちに対する理解と寛容を促します。そして、暴力を許容しない文化的素地を作っていくためにプログラムもこれまでの経験から工夫と改良を重ねて来ました。過去7回の取り組みの中から、レギュラー化した活動があります。Shower of Pace(平和のシャワー), Peace Parade(平和パレード), Service Learning(サービスラーニング), KIDs say no to gun(暴力への否定), Pledge to Peace(平和の誓), Meditation(瞑想), Non-violent communication(非暴力的対話のための研修)などです。今回はじめての試みは瞑想の時間をイベントに組み入れたことです。タイからPeace Revolution(ピース・レボリューション)というNGOが参加し、瞑想を教員に経験してもらうようにしているそうです。セッションはPVRE期間中2回ほど持たれました。PVREの中核的な教育省の平和教育推進しているスタッフがタイで実際にピース・レボリューションの研修に参加してそれを平和教育に組入れています。オンラインで小学生たちも瞑想のやり方を学んで実践していると聞きます。

 現在は教育省主導の年間行事のひとつとなり定着しましたが、元はリージョン10の教育省の当時の監督官であるDr.Mutia(ムチャ)さん着想と経験から始まったものです(ムチャさんは昨年定年されました)。5年前、マニラのトンド地区と北ラナオ州の若者との文化交流から、文化も住む場所も異なる彼らの交流がお互いにとって大きな学びとなり、刺激になったと経験を見て、ラナオ州の学生たちを交流イベントを考案し、そのイベントで学ぶ要素を通常の授業にも組み入れたと言います。
 
 日本の殺人発生率は0.5%(2009年調べ)、第二次世界大戦が終了して60年以上。私の世代は平和の時代を生まれ、安全な世の中を生きてきましたが、一歩日本から出れば暴力が身近にある中で生まれ育っている子どもたちがいるというのは何とも切ないと思ってしまいます。事実だけど、事実で終わらせないために行われている取り組みです。
 

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