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2013年6月11日火曜日

フィリピン市民団体の事例(1) テクノロジーを用いて平和を推進する PeaceTechの挑戦 その1

2011年の話。カナダのジャーナリストが立ち上げた、フィリピンの団体PeaceTechのワークショップをお手伝いしました。PeaceTechは、平和(Peace)と技術(Technology)を掛け合わせて作られた団体名で、その名の通り技術を用いて平和を推進する事業を特にワカモノ対象に、フィリピンのムスリム(イスラム教徒)とクリスチャンとの相互理解を目指して、マニラと南部のミンダナオ島を結ぶビデオコンフェレンスを開催したり、インターネット上で時間を設定してのチャットディスカッションや、トレーニングなどを実施したりしています。

 この団体との出会いは私の初めてのフィリピン滞在の年にさかのぼります。仕事の傍ら、平和系の団体に片っ端から会っていた時に、ミンダナオ島とつないでビデオコンフェレンスを開かれるということで招待を受けたことに始まります。

 フィリピンで起こっている紛争はいくつかあり、その紛争の当事者も様々で、イスラム教徒による現在MNLF(モロ民族解放戦線)、アメリカでテロ組織として指定され、外国人誘拐をすることで有名なアブ・サヤフ、昨年に和平交渉が劇的に進んだMILF(モロ・イスラム解放戦線)、や近年過激化しつつある共産系グループNPA(新人民軍)とフィリピン政府との武力による衝突が今だに起こっております。イスラムの人たちは、フィリピンの南方部に住んでおり、前3つの団体と政府軍との衝突はフィリピンの南部で起こっていたため、彼らの住む地域は危険と言われ、またそれらニュースの故にムスリムの人たちに対する偏見や差別につながっていることは否めません。ムスリムの人たちへのタクシー乗車の拒否や、学生寮などでは入寮を拒否されるケースもあるそうで、ムスリム=怖い人たち、というイメージがあるようです。

 PeaceTechのビデオコンフェレンスでは、南部に住むイスラムの人たちが紛争によって避難した経験、紛争後の生活の様子などを語ります。それをマニラの学生たちが聞き、質問をしたり、語りをもとにグループでディスカッションなどを行います。若者の理解度を測り、その後の行動の変容を知ることはできませんが、多くの参加者を集うことで、インパクトを持たせることができます。勿論、当初の目的、ムスリムは「怖い」と思っていたけど、彼らも紛争によって苦しんでいる人たちであるという理解と共感を引き出すことが出来たように思います。



私がお手伝いしたワークショップも同様に、ムスリムとクリスチャンの学生の混合で行い、理解の促進を促します。これまで、身近にムスリムの友人がいなかったというクリスチャンの学生もおり、彼らにとってムスリムの学生の視点や意見は新鮮なもののだったようです。勿論逆も然りですが、マニラのあるルソン島はクリスチャン人口比が高いため、イスラム教徒の学生もクリスチャンと机を並べ、共に勉強したりする機会がありますので、クリスチャンの学生がムスリムの学生と交わる機会よりは多いようです。ワークショップにアイスブレークゲームを交えながら、楽しみながらそして時には深く意見を交換し合う場も見られました。

<続く→ワークショップの様子>
 

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