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2013年6月12日水曜日

フィリピン市民団体の事例(1) テクノロジーを用いて平和を推進する PeaceTechの挑戦 その2

PeaceTechのformation workshop第1日目

お祈りで始められたワークショップ
Formation workshopとは若者(高校生~大卒30歳ぐらい)を対象に行われる平和教育のコンセプトに沿って行われるワークショップで、特にムスリムとクリスチャンの相互理解の推進のため行われます。ワークショップやキャンプなどがセットになっており、それを通じて平和教育の基本概念に触れる他、普段あまり交わることがない異なる宗教的背景を持つ参加者が親しい関係を築けるということも狙いです。

 ワークショップは1週間かけて行われ、その内容はモジュール1-5に分けられており、Moduleごとにテーマがあります。

モジュール1のテーマは平和の文化の創造(Creating Culture of Peace)。平和教育のコンセプトに沿って、平和、紛争、平和の文化の基本的な概念について学んでいきます。
モジュール2ではテクノロジーを用いて平和を築く(Building Peace through Technology)、PeaceTechの真骨頂であるテクノロジーを使って平和を実現するというのを講義と技術的な側面から学んでいきます。技術的な指導、どのようにブログをはじめるか、カメラの撮り方、ビデオの撮影の仕方等々を学ぶ。
モジュール3は基本的なファシリテーションの技術(Basic Facilitation Skills)を学びます。ワークショップの後はグループとしてプロジェクトを持つことを推奨しますので、どのようにワークショップを進めるのかを学びます。
モジュール4で、プロジェクト立案の手順とスキル(Project Development and Management Skills)を学びます。このワークショップの後プロジェクトを立案し、団体のサポートの下で実施して行くのは彼ら参加者です。どういった問題にフォーカスして、どのような手法を用いるのか、評価も含めての話しとなります。
モジュール5がリーダーシップトレーニング。これは屋外で、キャンプを通じて楽しく遊び楽しみながら学びます。

フィリピンの学生が世界を見たとき・・・
どう捉えるか?
モジュール1
 朝の8時半からレジストレーション、両宗教(ムスリム・クリスチャン)の祈り、自己紹介~からワー
クショップが始まります。第一日目と二日目にわたってモジュール1を行います。今日は基本となる平和についてのコンセプト、平和の文化について学び明日は紛争の分析、どのようにそれを取り扱うのか等を学んでいきます。


















 私と旦那は平和についてのコンセプトを担当しました。
各自が考える「平和」を絵と、彼らの言葉(フィリピンの多言語環境を考慮して)で表し、説明してもらいました。
「平和」そして「紛争」は人生の中で誰もが異なる環境で、自分自身の環境として持っているので、定義に間違いや正解はありません。のちに平和学で使われている平和の定義について説明をしましたが、補足のみにとどめました。






このワークショップから、いくつかの質問をもらいました。

1. 直接的な暴力と間接的な暴力というものはあるのか。

2. Spiritual Violenceなるものはあるのか。

3. 暴力というものは意図的か、それとも意図的ではないのか。

4. 口頭(コミュニケーションによる)暴力と直接的な暴力(身体的)な暴力はどちらへの対処がより難しいか。

 

 モジュール1の続き、ワークショップ二日目は、私の担当である紛争の分析(Conflict Analysis)か
ら始まりました。まず、とある団体で起こったとある問題(紛争)の一局面を見せて、そこから何に気がついたのか、そして少しだけ問題の理解(実際何が起こっているのかを分析する)のために平和学で使われている理論/考え方を紹介して、その後に解決を参加者に見つけてもらうという流れで行いました。賞味一時間半。

 今日の対象者である、主に大学生が直面するであろう課題、何かの団体に所属していて、お金を余分にもらった/寄付30,000ペソ、それをどうやって使うのかというところで意見が相違。当事者は団体の長とそれを補佐する事務局員、その二人を中心に話がだんだんエスカレートしていくという筋。団体の長は新しいパソコンの購入を主張。事務局員はスタッフのトレーニングを主張。

 PeaceTechのスタッフに参加してもらって劇をしたのですが、昨日の打ち合わせ以上にアドリブでしゃべるわしゃべる(笑)。台本ではセカンドパーティが介入するところでしたが、介入のタイミングを見失うほど。セカンドパーティが入ってきて、やれ団体の運営の仕方が悪いだの、なんだなと話もそれていって、そこでなんとか一区切り。

 意見の違いや、実際は団体の長も事務局員も団体の長期の益を見ているなどなどの気がついた点が上げられました。問題は、異なる欲求をみたせる十分な資源がないこと。もしかしたら、ジェンダーの問題(女性が積極的に意見を言えない状況)が絡んでいるし、歴史の問題も絡んでいるかもしれないので紛争にからむコンテキストをちょっと説明しました。

 紛争分析では当事者のポジション、関心、ニーズに焦点を当てていくツールを用いて説明。ポジションは実際に彼らが何を言ったのか。関心は彼らが本当にほしいのは何か。ニーズは、彼らが本当に必要としているのは何か。

 ポジションは上記のとおり、長はパソコンの購入、事務局員はトレーニング。関心は、新しいパソコンを買うことで、作業の効率化を図る。トレーニングを機会を得てスタッフのスキルを上げる。ニーズは双方ともに実は団体の発展を促すためである。表現の方法は異なれど、お互い団体のためを思っての提案であることに行き着きます。

 その後参加者に実際にそのスタッフが演じた役に成り代わって、せりふを変えて、紛争に対する態度を変えて解決に導くように演じてもらいました。はじめはまったく解決につながらなかったものの次第にお互いが本当に欲するものが見えて、新たにドナーに働きかけて寄付をしてもらい一件落着?でワークを終えました。

 このワークはより参加者が経験している、あるいは日常で直面する問題であることが肝。学生対象に夫婦問題を解決する劇とワークをしてもらうことでもしかしたら、問題に近すぎる人たちが考える以上に創造的な解決方法に至るかもしれませんが、リアリティにかけてしまう場合があります。

 モジュール1を一通り終えて、ある程度の実践を伴った理解に行き着いたように思います。

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