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2013年8月21日水曜日

「はだしのゲン」がNGOワーカーとなった遠因

 「はだしのゲン」、個人的にも大変思い出深い図書が、松江市教育委員会が、子どもが自由に閲覧できない措置を取るよう市内の全市立小中学校に求めていたことがニュースとなりました。

「はだしのゲン」は週刊少年ジャンプに掲載された漫画で、作者の中沢啓治さんによる、自身の原爆の被爆体験を元にしてストーリーが描かれています。単行本、文庫本などを含めた累計発行部数は1000万部を超え、世界で20ヶ国語ほどに翻訳もされているといいます。2007年5月30日からウィーンで開催された核拡散防止条約(NPT)運用検討会議の第1回準備委員会で、日本政府代表団は、本作の英訳版を加盟国に配布され(47 News 2007/04/29 07:08)世界的にも知られている漫画です。

 漫画の中に、人の首を切る場面や女性が乱暴される場面など、一部に過激な描写があることが教育委員会の公式見解だそうですが、“一般市民”が教育委員会に図書の撤去の要請をしたことが、今回の発端だったようです。(47 News 2013/08/21 20:51 松江、高知の教委にゲン撤去要請 男性がブログで明かす)
 激しい描写や天皇批判などから、反日、売国漫画だとの批判もあるのと同時に、原爆の悲惨さを訴える漫画、平和を考える漫画としての評価も高く、自分の思想的立ち位置によって大きく評価が分かれるようです。

 私がこの漫画を読み、アニメを見たのは小学生。過激な描写が頭から離れず、漫画とアニメを観た後は数日にわたり睡眠中原爆、戦争の夢にうなされました。影響をもろに受けたわけですが、劇画調の絵が怖かったものの、子ども心に原子爆弾なるものは絶対、二度と使われるべきではないということ、人の命がこうも容易く失われていくことに対する嫌悪感を覚えました。反日的漫画という指摘がある部分は、恐らく私が幼すぎて理解できていなかったと思われますが、「反戦」意識のほうが強く残り、すっかりそのころにはコスモポリタン的な考え方が移植されたように思われます。このような感じ方をしたことはある種の遠因で、高校時代は、図書館にあったモザンビークの内戦について書かれた書籍に影響を受けました。その時は、片田舎の学生でNGOなる横文字のよくわからない職業が存在するとは思っていませんでしたが、それら図書の影響で自然と今のような職業を選択するように押し流されていったように思います。

 今回の一件、私はなぜ今こうしたことがニュースになるのか?こうした議論は作品の古さから今に始まったことではなかったはず。むしろ、こうした閉架図書とするように苦情を送った人、それが受け入れられた地域もあったこと、この文脈に注目すべきだと思いました。

 私と同じ世代でも同作品を読んで、左翼的だ評価している友人たちもいましたが、それは読んだから言えることなのではないかと思います。批判した友人たちも読んだのは子ども時代だったようです。そして、のちのちそうした評価をするのは、それはそれでよいのではと思います。

 しかし、結果論としてかえってこの漫画を知らなかった世代にも知られるようになったのではないかと思います。

 

 


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