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2016年6月30日木曜日

イギリスのEU離脱の衝撃-オランダの場合

1週間前の6月23日木曜日にイギリスのEU離脱を問う国民投票が行われました。その結果は、52パーセントが離脱、48パーセントが残留と離脱派が上回り、離脱が決定しました。
ここヨーロッパでは、勿論連日連夜ニュースで報じられ(現在もです)、人々の話題に挙がっています。テレビを付けるとそればかりなので、旦那は情報が過剰すぎると言っていますが、それに同意しつつも無理もない話だと思います。
EUの中心のベルギー、ブリュッセル
あらためてEUとは
EUは、欧州連合(European Union)の略、現在28カ国の連合体、1993年11月1日のマーストリヒト*条約(欧州連合条約)発効により創設されました。ヨーロッパ内で再び戦争が起こることを抑止することを願い創設されました。

マーストリヒト条約でEU設立の目的が記されています。
(a) 域内国境のない地域の創設、及び経済通貨統合の設立を通じて経済的・社会的発展を促進すること、
(b) 共通外交・安全保障政策の実施を通じて国際舞台での主体性を確保すること、
(c) 欧州市民権の導入を通じ、加盟国国民の権利・利益を守ること
(d) 司法・内務協力を発展させること、
(e) 共同体の蓄積された成果の維持と、これに基づく政策や協力形態を見直すこと  
(Treaty on European Union , 外務省)

EUは、経済統合に加え、政治統合の推進を目指す、包括的で大きな機構です。
*マーストリヒトは、オランダ南部の都市。

経済の統合について言えば、EU間は関税がないので、EU圏内の経済の活性化が測られます。
人の移動については、それとは別途、協定が結ばれています。シェンゲン協定といい、ルクセンブルグのシェンゲン村で締結され、これに締結している国の間では入国審査なしで行き来が自由となります。しかし、EUに加盟しているのにシェンゲン条約に加盟していないイギリス、EUに加盟していないもののシェンゲン条約を締結しているノルウェーなどの国もあります。

EUの歴史をちょっと
1952年にECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が発足し、のち1958年にEEC(欧州経済共同体)を発足、経済の統合を目指しヨーロッパのより一層強い統合をはかっていきました。その後EC(欧州共同体)として、前2者の共同体とEURATOM(欧州原子力共同体)の主要機関を統合しました。そのECが現在のEUの前身です。このように徐々に基盤と信頼をつくり、はじめは6か国だったのは現在は28カ国となりました。

イギリスEU離脱派の主張
離脱派の主張は、「国としての主権を回復する」こと。離脱派の前ロンドン市長ジョンソン氏をはじめとする離脱派は、、増える国民の税負担、失業率の増加、治安の悪化、イギリス古来の文化の喪失を懸念していました。
EU離脱で、EU加盟国が払う負担金や、他の加盟国へのサポートして払われるお金(ギリシャ危機)などからも自由になります。

昨年だけで難民125万人がヨーロッパに来たとされてます。難民が到達した国々では、彼らを路上で生活させることは出来ないため、シェルターに連れて行き、その後難民申請を行い、受理されたら、その国で生活となります。(おおざっぱな説明となってしまいましたが、実際は細かいプロセスがあります。)

文化、言葉が異なる国からの移民となるため、社会的統合には時間がかかり、その間は受け入れ国がサポートします。そのサポートが税金からとなって居ることが受け入れ国側の不満となっていたりします。特に、ヨーロッパ諸国の税金は高いので、税金にみあった社会サービスをローカルが受けられなくなる?のではという声も出てきて不思議ではありません。

また、都市部の近年見られるようになった慢性的な混雑は、人口増によるものですが、EU圏内からの移民によってのものと言われています。

残留派の主張
ヨーロッパの金融市場の中核と言う地位を失う、そしてEUの混乱が起こることを懸念。
イギリスが離脱すると、EU内のパワーバランスがドイツに大きく傾くことになります。それを快く思わぬ国が離脱、EUが解体していくのではないかという懸念があります。

ただ、実際彼らの(いまとなっては)失敗は、離脱したら経済的損失が大きいというものの、それが当に脅しのようになり、移民の問題について提案が出来きませんでした。

イギリスEU離脱のオランダ人の反応
EU離脱で起こるとされていることにイギリスポンドとユーロの信用低下、価格の下落、景気の後退はよく言われることで、オランダ人の友人は経済におけるインパクトを懸念します。何せ、イギリスはオランダの重要な貿易国ですので。

なので、大方のオランダ人は英国の決断を残念な気持ちで受け止めています。先日もちょっとした会合に出席した際に、開会の辞でEUの離脱について触れていました。勿論、コメントは「とても残念だ!」とのこと。

ただ、オランダ人の友人は、もう起こってしまったことなのだから、次にどう進むかだとのこと。しかしオランダでも、EU離脱を叫ぶ人たちもいます。離脱を訴える政党は徐々に議席を伸ばしつつあり、英国の離脱が他の国に与える影響―離脱の選択肢を国民に考えさせる心配が僅かながらあるもの事実です。

オランダの難民
オランダ人は「節約家(別の言い方をするとケチ)」な人種と言われますが、こと社会問題、誰か助けが必要な人が居たら身銭をきれる、ポリシーある節約家(ケチ)であります。
中東地域からの難民がオランダにも相当数おり、彼らにニーズを提供することに関しては「義務」と思っている節があるようです(勿論、国民全体というわけではありませんが)。
シリアからの難民が難民申請をした場合は、かなり高い確率で難民申請が受理されるようです。ただ、他の地域例えばイラン出身の難民は申請しても受理されるとは限りません。これは別に差別しているというよりは、国としてシリアの現状をみて、その国からの難民に比重を置いているという意味です。

オランダ人の友人が今シェルターでボランティア活動をしているとのことですが、彼女のイラン出身の友人はゲイで、イランの自宅に留まっていたら厳格な父親に殺される(父親も帰ってきたら「殺す」と言っているそうです。どうやら脅しではないようです。)と、逃げてきたとのことですが、彼のケースは命が脅かされているケースであるものの、申請しても受理される可能性は低いようです。

オランダに生活するイギリス人
オランダに生活するイギリス人の法的地位は今後結ばれるであろうイギリスとオランダの二国間あるいはイギリスとEU間で結ばれる条約によるところが大きいのは勿論のこと。既にオランダで生活している英国民をいきなり追い出すことはできません。新しい条約取り決めによっての登録が義務付けられることでしょう。ただ、もうEU市民ではないので、EUに関する投票権、オランダで行われる選挙への投票権はなくなり、オランダ国内で働いている人の家族の呼び寄せに影響がでることでしょう。

長期で滞在するイギリス人は今後のことを懸念し、オランダ国籍にアプライすることを検討している人もいるようです。
(DutchNews.nlより)

保守党の政治的なガス抜きを狙った安易な国民投票の約束が招いた結果で、アナリストが指摘するように、キャメロン首相の根拠なしの楽観という感はぬぐえません。彼の退任の挨拶はかっこよかったんですけどね。

今は蜂の巣をつついたような騒ぎですが、暫くしたらイギリス抜きのEUとして機能していくに問題はないと思いたいとことですが、これによってEUが解体するのではと危惧するのは上記のように言い過ぎではないかもしれません。大きな視点で見ると、反グローバリズムへの動きの1つなのではないかと・・・思うこともなきにしもあらずです。




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